3回目は、車椅子のひやりはっとのまとめをお送りしたいと思います。まず、最初にこちらの事例からご覧ください。
事例1 デイサービスを利用しているAさんは、ケアスタッフに連れられ車椅子で公園へ散策に出かけました。 ケアスタッフが世間話をしながら車椅子を押していると、突如強い衝撃と共に、Aさんが前に投げ出されてしまいました。驚いたケアスタッフは、とっさにAさんの体を支え、なんとか転倒を防ぐことができました。 しかし、Aさんはそれ以来、車椅子に乗るのが怖くなり、外出も拒むようなってしまいました。 |
このケアスタッフは、利用者様との話に夢中になるあまり、段差に気付くことができませんでした。結果、利用者様に対して、恐怖心を与えることになってしまいました。
こういった事例を未然に防ぐためにも、車椅子の操作時は周りに注意することが大切です。「段差がないか?」「障害物がないか?」と、利用者様や患者様と話をしながらでも確認できるようにしましょう。
また、段差を進行する場合にも注意が必要です。「あの段差は低いだろうから、このまま進んでも大丈夫だろう。」と、そのまま進行した結果、予想以上の衝撃が発生し事故に至るケースも少なくありません。段差を進行する場合は、かならずゆっくりと進行し、利用者様や患者様に段差があることを事前に伝えれば、事故の発生や恐怖心を与えることを防ぐことができます。
しかし、気をつけなければならないのは操作時だけではありません。そんな「気をつけなければならない」事例を紹介します。
事例2 Aさんは、半年の入院生活を終え、住み慣れた我が家に帰ってきました。翌日、天気も良く絶好の外出日和だったため、車椅子で散歩へ行くことにしました。そこで、Aさんのお嫁さんが、車椅子の準備をしようとシートを開こうとしましたが、錆ついていたせいで動きが悪くなっていました。あまりに開かないので、思い切り力を込めて開けようとしたた結果、急に開いたアームサポートが足に直撃し、打撲をしてしまいました。 |
長期間使用しない場合は、錆防止のため駆動部に油をさしておいたり、カバーをかけて保管しておく必要があります。また、長い期間使用しなかった車椅子を使用する場合は、事前に部位のチェックやメンテナンスを行うことが大切です。
さて、3回にわたりお送りした「車椅子のひやりはっと」いかがでしたでしょうか?第1回〜2回でお送りしたとおり、車椅子は便利である反面、危険を伴うものであると理解していただけたと思います。そのほとんどが、ちょっとした油断であったり、「〜だろう」といった想像から発生しています。それは車椅子にとどまらず、あらゆる福祉用具に言えることでもあります。
次回からお送りする予定の「特殊寝台のひやりはっと」でも、多数の事例がございます。その事例をご覧いただき、少しでもお役にたてていただければと思います。